ブルーノ・シュルツはクエイ兄弟の「ストリート・オブ・クロコダイル」の原作, 「大鰐通り」を書いた. 1892年にポーランドに生まれて, 1942年にユダヤ人として路上で射殺された.

シュルツの小説は動く図画工作のように見える, 「ストリート・オブ・クロコダイル」を見た後に読んだせいだろうか. 稲垣足穂に似ているとも言える. 小説はすべて平均して10ページに満たない短編の集まりだけれど, どの短編もつながっているし, ある意味で同じ話だから, 短編とは言えないかもしれない (足穂の小説がすべて同じ話の繰り返しなのと同じ. でも一千一秒物語の方がもっと短い!). シュルツはもともと画家なのだったし, 足穂は工作家だった (本当は飛行家だった). 足穂の工作は子供じみた大人が作る平面のおもちゃだけれど, シュルツの工作は大人じみた子供が作る毛の生えたおもちゃ. なぜ誰も足穂を原作にした映画を撮らないのだろうか? (まりの・るうにい氏のパステル画はある)
工藤幸雄の日本語も素晴らしい.
クエイ兄弟の別の作品「ベンヤメンタ学院」の原作者, ヴァルザーの「ヴァルザーの小さな世界」は残念ながら絶版みたい. ヴァルザーは工作家よりは夢想家だろうか (酩酊しているときの稲垣足穂だ).
「大鰐通り」と聞くとエリアーデの「ムントゥリャサ通りで」を思い出すけれど, その間にどんな関係があるわけでもない. シュルツもヴァルザーも足穂もクエイ兄弟も宗教学者ではない.
これらの間に関係があるとしたら, それはただ「世界模型」ということか.